信長の弟 信行 ( のぶゆき )の臣が、叛乱を起した折も、信長の 先手衆 ( さきてしゅう )に交じって行き、 刃 ( やいば )も折れるような奮戦をした。
けれど藤吉郎は、帰るふうもなく坐っていた。
犬千代は藤吉郎の嫌いな、美男ではあるが、いわゆる美男型の美男ではない。
その雁の 群 ( むれ )が、湖畔のほうへ斜めに落ちて行くのをぼんやり眺めていると、三名のすぐうしろを、一騎の武者が、極めて静かに通って行った。
文学青年 ぶんがくせいねん だ。
失礼ながら、又右衛門殿には、自分が嫁にゆくような勘ちがいをしておられるのではございませぬか。