ある戦車中隊長が、戦死直前に、「敵は私の戦車をズタズタにひきさいている」と叫んだことは、戦術上のバランスがかわりつつあることを、はっきりと表現したものであった。
この同じ日、ロンメル元帥の機甲軍は、わずか六〇両の戦車と三五〇〇人の歩兵、およびイタリア軍の四四両の戦車と六五〇〇人の歩兵をもって、イラクから一七〇〇キロの地点にいた。
ロンメルも戦況について心を悩ましていた。
ジーグラーは、すでに第二十一機甲師団をスビバに突進を命じていた。
しかし、ほかに道はなかったのだ。
アフリカ軍団にとって、このあとの出来事は奇跡のようなものであった。
この苦しみは空にかぎらず、地上でもたえずおこっていた。